其法、歯様に臙脂(えんじ)を筆にて染め、その上に真粉(しんこ)を推付る。臙脂の附き通りに削て、幾辺も斬の如くして抉り、上下共に鑞石にて歯を作りて植えるなり。又その人の落ちたる歯を漆(うるし)にて植えるも生歯に異る事なくしても尤もよし~」
木の材料としては、「黄楊(ツゲ)を用いよ」とはっきり述べられている。
抜けた顎の部分を臙脂(えんじ:紅花から作った染料)で染めた状態にし、真粉(しんこ:白米の粉を蒸して餅状にしたもの)により型どる。この顎の型、いわゆる真粉の陰型は口の中の朱色が転写されるので、この色の付いた部分を模写するように、木を抉り(えぐり)、削っていく。これを何度も繰り返していくと書かれている。
江戸の入れ歯師については、あらためて触れたいと思うが、医業にはほとんど関係ない人たちにより成り立っていた。
中には素性の怪しい者たちもいたらしい。
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