それから,2週間ほどたったある日,技工用金属精算のため1F総合受付におりたところ,バッタリCさんの娘さんと出くわした。
私に挨拶に来られたとのことだった。
話をお聞きすると,Cさんは前回来院された数日後,容体が急変し,そのまま不幸な転記をとられたそうである。『
歯科インスツルメンツ』
新しい義歯が出来上がってからは,
「若い頃の歯が戻った」とたいへん気に入っていただき,
「早く慣れて,先生の手を煩わせないようにしないと…」と就寝時も義歯をはずさず休まれていたそうである。
「母の棺にも義歯を入れました」とおっしゃり,深々とお辞儀をされた。
”教科書的に理想の義歯”が”良い義歯”という独りよがりの思い,そして不勉強。
結局,私の”呪縛”はCさんをも巻き込んだのではとの思いが頭をめぐり,Cさんのご冥福を祈りつつ,娘さんを前にただただ頭を下げるしかなかった。
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