歯ぎしりというと、睡眠中に歯が強く擦れ合ってギリギリと音が出る状態のことを思い浮かべます。確かに睡眠中の歯ぎしりは無意識に行なうため力強く、歯や顎へのダメージも大きなものとなりますが、このギリギリと歯を擦り合わせる状態はグラインディングと呼ばれ、歯ぎしりの中の一種類でしかありません。
歯ぎしりとは、このグラインディングと、歯を強く噛みしめたりくいしばること(クレンチング)、歯をすばやくカチカチ鳴らすこと(タッピング)の三つの総称で、人は眠っているときに限らず、昼間でも無意識に歯ぎしりを行なっています。最近は同じ意味でブラキシズムという言葉が使われることが多くなってきています。
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「私は睡眠中に歯ぎしりの音なんてしていないから大丈夫」多くの方はそう思うでしょう。しかし、睡眠中の歯ぎしりは、音をたてていないことの方が多く、ギリギリと音を立てて歯ぎしりをする人の割合は低いのです。現在では少なくとも50%以上の確率で、大なり小なり歯ぎしりをしていると言われています。
しかし、そうは言われても「音を立てていないのであれば、迷惑にならないし問題無いじゃないか」と考えてしまいがちです。しかし、歯ぎしりはむしろ、他の人の迷惑になるという問題よりも、自分自身の歯や顎への影響のほうが大きな問題なのです。
例えば今、歯をぎゅっと噛み締めてみて下さい。限界まで力を入れる前に歯が軋み、歯の付け根まで力が伝わってくる感覚があります。個人差はあるにしても、ある程度の力を入れた時点で「これ以上は危険」というのを感じると思います。しかし睡眠中は当然意識がありませんので、力をコントロールすることが出来ません。睡眠中の歯を擦り合わせたり、噛み締めたりする力は、起きていて意識のある状態の何倍もの大きな力が生じているのです。
このように異常に強い力がかかると、その力を受けた歯や歯肉や顎は少しずつダメージを溜めていきます。歯であれば、咬合面が擦り減ってしまったり、歯にひびが入ったり、最悪歯が折れてしまう可能性すらあります。
それ以外にも上下の歯が強く噛み合うことで歯にたわみが発生し、構造的に脆い歯頚部(歯の表面の付け根部分)が欠けてくさび状に抉れてしまったり(この現象をアブフラクションと言います)、虫歯でもないのに歯が激しくしみるようになるなどの症状や、歯や歯肉に限らず、顎関節症や顎顔面痛、肩こりや偏頭痛などをを引き起こす場合もあります。
また、歯周病によって症状が進行していくと思われている歯の動揺(グラグラになること)に関しても、その大半はこれらの強力な力によるダメージが原因になっています。
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