特徴的な顎の形態、虫歯や骨欠損等などの様子も見受けられるが、
まず、目立つのが歯の「咬耗(こうもう)」である。
咬耗の説明をする前に、
歯の模式図を上記サイトより再びお借りし、一般的な歯の構造を少しおさらいしておきたい(便利だ)。
歯はエナメル質、象牙質、セメント質、歯髄の組織からできている。歯が口の中に露出している部分を歯冠、歯冠より下の部分を歯根という。その歯の中心部には、一般的に神経と呼ばれる歯髄が通ってる。歯にかかる衝撃を受け止め、あごにかかる力を吸収・緩和するために、歯根部分の表面(セメント質)と歯槽骨は歯根膜という繊維性の結合組織で結びついている。歯は歯槽骨、歯肉、歯根膜の支持組織によって支えられている。
咬耗とは、
歯と歯あるいは歯と食物の接触によって生じるもので、純粋にエナメル質と象牙質のすり減り状態(物理的な損傷)を指す。さらに咬耗は、日常の咀嚼作用や口を閉じた際の歯の接触による「生理的咬耗」と、いわゆる悪い癖となった歯ぎしりをする人にみられる「病的咬耗」に分類される。なお,生理的咬耗では68μm/年程度,病的咬耗では300μm/年の損失がみられるという。
ちなみに1μmは、0 .001ミリメートルである。『
LED照射器』
画像を眺め,ざっと見積もってみても30~40㎜程はすり減っており、歯髄が一見露出したところも散見される(歯の中央部でやや黄みがかって見えるのは象牙質)。
綺麗な咬頭を有する人工歯を用いた顎模型と比べてみると、その違いは明らか、その削れ度合いの大きさがよくわかる。
少し調べてみたところ,この遺骨は妙音寺遺跡(埼玉)から出土されたもののようで,縄文時代早期,壮年の男性といわれている(国立科学博物館 「日本人はるかなる旅展」:
壮年は40~60歳を指すので,もし,現代人において,このような咬耗状態を呈していれば,なんらかの問題,習癖,慣習等があると,我々歯科医は診ると思う。
後述する予定であるが,
この縄文人の骨,たしかに下顎骨だけをみても,噛む力はかなり強大であったと推察される。
こうなると,その生活習慣,特に食生活がどのようであったのが気になってくる。
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