フッ化物療法によって骨密度が増すことは確かめられています。また、適正なフッ化物濃度飲料水を使用している人に骨折が少ないということが最近の疫学研究で分かりました。
つい最近になるまで、水道水フッ化物濃度調整を行っている地域と行っていない地域での比較で、骨密度や骨折の頻度に有意な差を確認できませんでした。しかし、高齢者で骨の弱くなった者を対象とした治療的フッ化物療法では、以下のように骨を強くできるとの報告があります。
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1)骨の強化と骨折の予防におけるフッ化物の役割についてADA(アメリカ歯科医師会)は「水道水フッ化物濃度調整ファクト」の中で以下のように述べています。
この30年間、骨粗鬆症の治療の実験療法として、主に徐放性のフッ化ナトリウムによるフッ化物が用いられてきました。フッ化ナトリウム療法はフッ化物に骨の喪失を減らしたり、現存の骨量を増やしたり、また、骨折を予防する作用があるために用いられてきました。臨床試験の結果は、次に示す2つの調査が示しているように結果は一定ではなく、さらなる調査の必要性が示唆されます。
①1995年、4年間の臨床試験の最終報告で、フッ化物には骨量の増加を助ける働きがあることがわかりました。この調査は、閉経後の骨粗鬆症の女性で徐放性のフッ化ナトリウム(1日2回25㎎投与)とクエン酸カルシウム(1日2回400㎎投与)を4年間(12ヶ月治療を受け、2ヶ月は治療を受けないという)14ヶ月サイクルで摂取を繰り返してきた人たちの結果です。この結果この治療は安全で、新たな脊椎骨骨折を減らし、脊椎骨の骨量の増加に効果があるという結論を得ました。
②50人の閉経後の女性における6年間の臨床試験では、フッ化ナトリウムとカルシウムの補足治療は骨粗鬆症の治療に効果が無かったようです。
2)2001年にコクランライブラリーに登録されたフッ化物療法が閉経後の女性の骨密度、椎骨ならびに椎骨以外の骨折、副作用にどのような効果をもたらすかについてのシステマティックレビュー(全世界の論文を収集し、科学的にそれらの論文を批判的吟味した結果のまとめ)でも以下のような結論を出しています。フッ化物療法によって腰椎の骨密度が増加しますが、腰椎の骨折率は変わらないようです。フッ化物の用量を増加させると椎骨以外の骨の骨折率と胃腸の副作用が増加しますので、適量の摂取が必要です。
ところが最近になってきわめて重要な所見が示されました。すなわち、適正フッ化物濃度飲料水を使用している人に骨折が少ないということが最近の大規模な疫学研究で分かったのです。
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最近、2001年に発表された整形外科領域の疫学研究論文で、種々のフッ化物濃度の飲料水を少なくとも25年以上常用してきた50歳以上の高齢者8,266人の骨折に関する研究結果が発表されたのです。それによると、フッ化物濃度の低すぎる飲料水や反対に高すぎる飲料水を常用してきた人では骨折頻度が高く、フッ化物濃度約1ppmの飲料水を常用してきた人で骨折頻度が最も低いことが判明したのです。ここで大切なことはフッ化物濃度1ppmというのはむし歯予防で最も効果的な濃度とされてきた濃度です。すなわち、歯を強くするフッ化物濃度の飲料水は骨も強くするということです。.
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