これより不定期ながら、先の記事で触れた「木床義歯」について、関連事項やエピソードなどを交えながら記していきたい。
出だしから偉そうに書いてはいるものの、実際の話、この義歯については名前こそ知れ、特段、教科書や授業で習ったわけではなく、その詳細については(私自身)正直不明なところが多い。したがって、記事の多くの部分は、参考資料を基にした覚え書き(もちろん、出典は明記する)に近いことを最初におことわりしておく。
木床義歯は、既述のとおり、我が国の伝統芸といってもよい精緻な木彫り技術により、どこの国よりも古く、そして現在の義歯と同じような原理で実用化されていた事実は驚嘆に値する。同時に、日本人として、義歯治療に携わる一人として、誇らしい限りでもある。
当たり前ではあるが、木床義歯の使われていた当時と今とを比較すれば、治療技術や材料等に大きな違いがある。しかしながら、幾つかの資料を見る限り、義歯にまつわる悩み・問題については時代を超えて、あまり変わらない事も同時に知る。
この点は非常に興味深く、
「故きを温ね新しきことを知る」は当然のことながら、「新しきことにならしめなかったこと」を再考するのも意義あることと考えた。
そもそも木床の「”床”とはどういう意味か?」から始めてみたい。
床とは、義歯の構造上、人工的な歯(人工歯)を支え、失われた歯の歯肉や周囲粘膜を覆う部分のことをいう。正確な言い方をすれば、「義歯床」という。
下記画像を見てもらえばわかるとおり、青いフレームラインの入ったピンクの部分を指す。
義歯床説明
現在、一般的な義歯製作材料には、もっぱら合成樹脂の1種であるレジン(歯科用)が用いられる。
もうお分かりのとおり、件の義歯は、木で出来ているので「木床義歯」というわけである。
なお、義歯の数え方は、1コ、2コではなく、1床、2床となる。
ちなみに、英語ではこの床にあたる構造部をbase plate(板) of denture(s)あるいは単にplate(s)と呼ぶ。
*denture(s): 義歯
汎用的な呼称として、dental plates もしくは単純にplatesは、総義歯や義歯のことを指すことが多い。
木床義歯は、「Wooden dentures(木製義歯)」と英訳されることが多い。
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